映画和日乗

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「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」監督ポール・トーマス・アンダーソン at シネリーブル神戸

パンチドランク・ラブ」('02)以来のP.T.アンダーソン監督最新作。
19世紀末のアメリカのどこか。貧しい鉱石掘りのダニエル(ダニエル・デイ=ルイス)は油田を掘り当て、ほどなく石油ビジネスに邁進して行く。20世紀初頭のある田舎町、石油が出ると踏んだダニエルは土地買収を進め、地元民を抱き込もうとする。しかしそこにカルトなキリスト教一派の牧師サンデイ(ポール・ダノ)が立ちはだかり、入信して寄付しなければとダニエルにまとわりつく。ダニエルはそれを無視し、油田の掘削に成功するのだが、そこへ、彼の得た富をあてにした「腹違いの弟」と称する人物が現れる…というお話し。
油田、と言えば即座に「ジャイアンツ」('56)が思い出されるが、あの映画のロマンはここにはない。ひたすらに欲得にまみれた男達が描かれる。理性として立ちはだかる筈の宗教も単なる欺瞞に過ぎない。この本音丸出しがP.T.アンダーソンの真骨頂、ゼニゼニゼニの大阪商人が狩猟民族だったらこんな感じじゃないか。
全く愛されないキャラクターを演じるダニエル・デイ=ルイスの化けっぷりは天下一品(本作でオスカー獲得)、油井から原油が噴き出し、ダニエルの養子の耳をつんざき、更に爆発引火するシーンの映画的躍動感に満ちたキャメラの素晴らしさ(撮影監督ロバート・エルスウイット、本作でオスカー獲得)と音楽のマッチぶりには震えた。2時間40分、全く飽きない、いやもう一度観たいと久しぶりに思わせる傑作。お勧め。邦題のセンスの悪さで損している。

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド [Blu-ray]

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