映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「スパルタの海」監督・西河克己 at 神戸映画資料館

1983年に東和により製作されるも、戸塚ヨットスクールの主宰者である戸塚宏氏逮捕によって公開されぬまま封印されていた作品。
いかな際物かと思いきや、真摯かつ巧妙、西河監督らしいウェルメイドだ。酷い暴力の応酬が描かれるが、そういえばあの頃こんな描写はTVの刑事モノでもルーティンだったと思い出す。実際の家庭内暴力、実際のコーチのしごきぶりはもっとだったであろうと想像に難くない。
一方で戸塚宏氏(伊東四朗、素晴らしい)は情の人として描かれており、職員達は彼を慕っていて、世間の殆どが彼に無理解とされている。加えて、精神疾患についての知識は独りよがりと言わざるを得ない。25年前がアスペルガーという言葉すら聞かれなかった時代であったとしてもだ。
また、海で瀕死の思いから必死に這い上がろうとしたはずの子供達の描写が弱い為、前半手がつけられない暴れん坊だった少年少女達が、その後すんなり品行方正になっているのがやや唐突な印象。
チラシによると、西河監督のご子息がDV、引きこもりの末交通事故死され、その翌年にこの映画の監督を請け負ったのだそうだ。'85年に日大芸術学部西河克己先生の授業を受講していた折には知る由もなかったが、封印はさぞかし無念であっただろう。

スパルタの海 [DVD]

スパルタの海 [DVD]