映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「少年と自転車」監督ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ at シネリーブル神戸

ベルギーのダルデンヌ兄弟最新作。
ダルデンヌ兄弟が来日した折に耳にしたネグレクトに起因する少年犯罪の話しが脚本のヒントになっているとのこと。庶民、とりわけ低所得者層の不運や悲哀を冷徹且つ執拗なキャメラで見つめ続けて来た彼等、今回は場所はどこなのかわからないがのんびりとした郊外の暖かそうな日差しや明るい色彩を存分に取り入れたルックで物語を展開させる。
父親によって施設に預けられた少年シリル(トマ・ドレ)が執拗にどこかに電話をするシーンから始まる。それは父親への電話なのだが電話番号が使われなくなっていた。周りの大人を一切信じず、かつて父に買って貰った自転車だけが父と自分の絆の証しなのだが、その自転車はどこかに売られてしまっていた。この父子がかつて住んでいたアパートの住人サマンサ(セシル・ドゥ・フランス)が彼の自転車を取り返してくれる。シリルはサマンサに「週末だけの里親」になってくれと懇願する。何故かそれを承諾したサマンサと連絡の取れなくなった父を探し当てたものの、「もう会わない」とあっさり裏切られるシリル。サマンサはそんな彼を受け入れようとするが…というお話し。
素人の、オーディションで選ばれたシリルを演じるトマ・ドレという子の顔の造作がこの映画の印象を決定づけている。何という悲しげな、自信と愛を失ったか細さ、淋しさが現れた顔なのだろう。例によってひどくリアルだ。しかし今回のダルデンヌ兄弟にはそんな彼の過酷な運命の反転を予感させる、眼差しの暖かさを感じる。サマンサの我慢強さもしかり。そして自転車と一体になっているかのような少年の疾走は実に映画的躍動感に満ちている。
ラスト、ボクよう頑張ったな、と涙が出かかる。傑作、お勧め。


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