映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「妻への旅路」監督・張芸謀 at シネリーブル神戸

中国政府の意向でつくらされているかのような、ここのところ余り食指の動かない作品ばかりだった張芸謀監督の最新作は「初恋のきた道」('99)の、描かれなかった(描けなかった)「文革後」の後遺症の物語。
20年生き別れた夫婦、妻は夫の顔だけを忘れているという心因性の病に冒されていた、という果たしてそんな病があるのだろうかということはさておき、極めて作劇的、映画的な枷である。脚本のト書きで2行くらいの事を、リアルな時間経過を取り入れず、延々とカットバックすることで二重三重に情感を増幅させる技を多用していてコン・リーの一世一代の名演技を引き立たせているあたり、監督とのコンビの絆を感じる。
深刻な人権蹂躙を告発するモチーフを映画的表現の粋で見せ切る、演出力の際立った一本。
佳作、お勧め。


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