2020.tiff-jp.net開催中の東京国際映画祭でジャパンプレミア、台湾では現在大ヒット上映中。
原題は「孤味」。脚本家出身の許承傑監督はこれがデビュー作。検索してみると2017年に同じタイトル「孤味」で30分の短編をつくっている。
www.imdb.com恐らくこれのロングバージョンが本作なのだろう。
舞台は台南。もうこれだけで私はこの映画を観たくて仕方がなかった。
魚市場がオープニング。手前味噌だが私の「ママ、ごはんまだ?」 を彷彿とさせる魚介類の画。
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海老を手掴みする初老の女性がヒロイン。海老団子の屋台から台南一のレストラン経営へと上り詰めた。娘が三人、孫が一人。この孫が台北から台南駅にやって来る。おばあちゃんの70歳の誕生日祝いの為に。その日、病院でこの一家の父親が病死。二十年も音信不通だった父親だったが末娘と愛人が付き添っていた。
その父親の葬儀までの一週間の物語。
「父の初七日」(2010) もそうだったが台湾の葬式は不謹慎ながら行事が多彩で画的には面白い。
次女役が日本でもお馴染みの徐若瑄(ビビアン・スー) 。
長女は奔放、次女はしっかり者。三女は優しい。姉妹ものの典型だが、最も奔放だったのが亡き父親。
この父親と母の確執、しかし父親を最後まで支えた女性の登場で隠されていた秘話を告白した母。
カラオケの歌えるタクシーが本作のアクセントになっていて冒頭台南駅まで迎えに行った孫と一緒に「じゃ一曲歌いましょうかね」てな感じで歌い出す母親(孫にとっては祖母)が、ラストに切々とタクシー車内で歌う姿に涙腺決壊。
人情、愛情たっぷり。中華圏の人々の家族愛は現代日本のそれよりも遥かに濃密。李安の「恋人たちの食卓」('94)もそうだった。
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笑って泣けて、個人的にはしばらく行けていない台湾、台南への郷愁にどっぷり浸る。早く行きたいものだ。
ビビアンも出ている(素晴らしい好演)ことだし是非日本公開して欲しい。
傑作、お勧め。