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「バーナデット ママは行方不明」監督リチャード・リンクレイター at 新宿ピカデリー

映画『バーナデット ママは行方不明』オフィシャルサイト

 

 2019年の作品が何故か今頃公開。本国のオフィシャルサイトも閉鎖されているほど。ケイト・ブランシェットは2022年の「TAR/ター」以前ということになるが天才アーティストという役柄は「カブって」いるのに全く違うアプローチとなっている。とすると、ブランシェット的にはこの「バーナデット」をバージョンアップしたのが「TAR」なのか。

よく喋って相手を「論破」しようとするあたりも一緒、そして自己が破綻している点も似ている。かといってどちらの映画を先に見ようとブランシェットのバージョン違いというこの人ならではの凄みが存分に楽しめる。

 リンクレイター監督はブランシェットを得てそれこそ「TAR」並みのハイブロウを目指せたのかもしれないが、確信犯的にテレビコメディのようなルックを選んでいる。キャメラが中途半端なサイズで人物を捉えるのは勿論それが狙いなのだ。

バーナデットの延々と喋るコリクツをオーヴァーアクトかつテレビっぽくみせる事で飽きずに観ていられる。何せ話しはとても単純(隣人とのトラブル)で、なおかつ南極までそれを持っていかなければならないのだ。話しを壮大にする為にFBIまで出て来る。このFBI捜査官に全く貫禄がないところがまたテレビコメディっぽい。

 そんな訳で最後の家族の大団円はちょっと泣けたし、エンドロールはリンクレイターらしい粋。

佳作、お勧め。