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「ブルームーン」監督リチャード・リンクレイター at kino cinema 神戸国際

bluemoonfilm.com

 まずロレンツ・ハートとはどんな人だったのか。

ロレンツ・ハート - Wikipedia

 

 ブロードウェイミュージカルの知識があるのとないのとでは本作への興味の度合いが変わってくる。リンクレイター監督&イーサン・ホークコンビ作というだけで劇場に足を運び、なんの予備知識もないままスクリーンに正対して、前半は「しまった」と後悔した。

ジョークというのは言語の韻(ダジャレ)や宗教的バックボーンも含めて極めてドメスティックなものである。なので、ロレンツ・ハート(イーサン・ホーク)がバーテンダー相手にのべつまくなく話し続ける内容が頭に入ってこない。本作が欧米では受賞してある程度評価されているのは台詞とブロードウェイへの見識故だろう。

1943年といえば昭和18年、戦時中で普通に陽気なミュージカルをやっている米国と大学生まで徴兵していた国との文化的民度の落差に今更ながら暗澹たる気分になる。

冒頭、大雨の中ロレンツが路地で倒れて絶命、お話しは少し時間を巻き戻して劇場とそこに併設されたバーだけで進行していく。

このバーのセットが本作の舞台の全てでもあり、舞台劇についての人生の物語と二重の意味を持つ。

ロレンツ・ハート、才能がありながら酒で身を持ち崩した作詞家。コンビを組んでいた作曲家リチャード・ロジャース(アンドリュー・スコット)や演出家のオスカー・ハマースタイン(サイモン・デラニー)に見限られてしまう。

この日はロレンツを外した別の作詞家による新作舞台劇の初日で、それでもバーで彼らの出てくるのをバーボンをショットで呷りながら待っているロレンツ。

ロレンツが「自分の弟子」だというエリザベス(マーガレット・クアリー)がある男を伴って現れロレンツに紹介する。ロレンツのファンだというその男はロレンツにサインを所望する。名前はジョージ・ヒルだと。エリザベス曰く「彼は音楽をやっているんだけと映画監督志望なのよ」。

これってジョーシ・ロイ・ヒルのことじゃないか。ブロードウェイのについては不見識でも映画となったらすぐに勘が働く。

検索したらビンゴだった。

【映画評】『ブルームーン』考察。天才作詞家ロレンツ・ハートの孤独な夜を描く…実在人物と歴史背景を解説。評価レビュー | 映画チャンネル

 

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 ロレンツは今まさに脚光を浴びているリチャードにすがりつき、ゲイなのに若きエリザベスに愛を告白そしてフラれる。この寂しさにはちょっと同情してしまう。

もう若くはない、話すことと言えば過去の栄光。記憶は鮮明で、バーに居合わせた小説家の作品の一節を誦じることも出来る。なのにその才能は枯渇してしまった。それを認めたくはない‥‥

NYの社交社会、誰も本心で彼を嘲ることも罵ることもなく慇懃だが、実は遠ざけている。冒頭のシーンで彼が野垂れ死することが伝えられているだけに、クリエイターの末路として身につまされる。

 

 エンドロール、夥しい人数のエグゼクティヴ・プロデューサー、そして"Trainee"という肩書きもたくさん。翻訳すると研修生。

小分けの出資者とスタッフ費節約の研修生、更にはロケ地がアイルランドと分かる。

公式サイトによるとキャストにアイルランドの俳優が多い。

ハリウッドやNYにセットを建てるよりアイルランドの方が安上がりだったのだろうか。

アメリカ映画、身につまされる。