単純に楽しい美味しいキュリナリー映画に在らず。
フランス、ひいてはヨーロッパに於ける現在進行形の移民問題が描かれる。
原題"La Brigade"、直訳すると「分隊」だがここではシェフの率いる料理人のチームを指す。
それにしても嘗てのフジテレビの人気番組「料理の鉄人」に再会できるとは。あの番組、フランスに輸出されていたのだろうかと検索するとこんな記事が↓
r-tsushin.comなるほど!映画ではテレビ番組で勝ち抜いたシェフがその賞金で新しく店を開く展開になっていて、そんなすぐに出せるのかと思ったが、実際にはこういう事だったのか。
話は前後するが、移民の職業訓練所の料理長となったカティ(オドレイ・ラミー )がある反抗的な青年に料理教室から出て行けと言い放つ。その後施設長カルディ(フランソワ・クリュゼ)がカティを呼び出す。カルディは街へ出て不良化する移民の若者を積極的にケアしている。
そのカルディ施設長はカティに言う「出て行けと言っては行けない。彼らは居場所がないのだから」。良い台詞だ。そしてこの映画に通底する「相互理解」のテーマは人情に溢れ、素直に心温まる。善人の塊のような施設職員のおばちゃんも素敵だ。
一方、移民受け入れにはハードルが設けられており、それによって強制送還される若者もいる。先の反抗的青年は年齢詐称で強制送還されてしまう。
ようやく彼らの立場を理解し始めたカティの取った行動がクライマックス、いかにもフランス的レジスタンスに胸が熱くなる。
「フランス人と食」は、単に手の込んだ美食を称揚するものではない。偶々最近読んだピエール・ビルンボーム著「共和国と豚」は、「同じテーブルについて、同じ料理を食べること」が他民族がフランス人として同化できる必要条件であると説く。
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サクサクと話しが進むキライはあるもののキャメラは秀逸で清々しい。同じくアフリカ移民の問題を描くダルデンヌ兄弟「トリとロキタ」は傑作だったがそれとは相反する展開に、つくづく善き人との出会いの大切さを感じる。
佳作、お勧め。