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35㎜フィルム撮影、70㎜プリントも存在するらしい。
アメリカに反政府組織ってあるのか、と思ったら渡辺幻氏のXでの絶賛解説で思い出した。
シドニー・ルメット「旅立ちの時」('88)か。
レッドフォードの「ランナウェイ/逃亡者」(2012)は未見。Amazon Primeにあるようなのですぐ観よう。
この両作で描かれる反政府組織、The Weather Underground が本作「ワン・バトル・アフター・アナザー」に登場するFrench 75ということらしい。
French 75ってのは
不見識を恥じる。
P.T.Aは脚本も兼任、米国との国境を超えたメキシコ人不法滞在者の収容施設から物語は始まる。鮮やかなゲリラ戦術で収容所を攻略する組織French75。最後の最後まで160分予測不能の展開が続く。
移民排斥、白人至上主義を標榜する組織。その名もChristmas Adventure(同名の童話がある)。
この組織に入りたくて仕方がない警官ロックジョー(ショーン・ペン)が専横の限りを尽くしてFrench75の壊滅を実践して行く。ショーン・ペン、コンプレックスにまみれたファナティックをやらせたら天下一品。この手の輩は米国に限らず我々の隣人にもうじゃうじゃいる。武器を持ってるかいないかの違いだけだ。
一方、かつては爆弾のプロとしてFrench75に助太刀していたボブ(レオナルド・ディカプリオ)は収容所攻撃から16年後、カラテ(何故かニンジャ・アカデミーという道場)を習う娘ウィラ(チェイス・インフィニティ)を溺愛している。
ネタバレになるので詳細は記さないがこの警官ロックジョーとボブはFrench 75のリーダー格だったベルフィディア(テヤナ・テイラー)と三角関係なのだ。
そして警官隊とFrench75を匿う移民組織との内戦が始まる。移民組織側のセンセイ(ベニチオ・デル・トロ)のカラテ道場に1978年の「スーパーマン」日本版ポスターが。
アメリカの今の社会情勢のメタファーである事は自明で、この戦闘状態はSFというより起こり得る近未来かも知れない。
IMDbによると撮影時期は2024年前半だそうだが、この荒涼とした世界はトランプ2.0後の今を予見していたかのよう。
ラストカットはタイトル"One Battle After Another"(戦いは続く)という宣言を明確に物語る。最早若松孝二だ。アメリカが今、そんなことを言わなければならない国になってしまったのだ。
今年、アメリカ映画は質的に瀕死状態だったが、いや死んでたまるかとポール・トーマス・アンダーソンは拳を突き上げる。これがオスカー獲らなかったらハリウッドもまた死す。
傑作、お勧め。TOHOシネマズ西宮OSの小さな6番スクリーンで観て後悔、IMAXで観るべし。