ウディ・アレンの映画でどれが好きか、と問われると「アニー・ホール」('77)と「マンハッタン」('79)が同率首位だ。今でも繰り返し観る。
その「マンハッタン」でダイアン・キートンの元カレ役でちらっと出てきただけで笑いをとっていたのが今回の主役リフキンを演じている、ウォーレス・ショーン。
舞台はサン・セバスチャン国際映画祭、リフキンは米軍のアーミージャケット風の上着を羽織っている。これは「マンハッタン」でアレンが常に来ていたベトナム戦争時の米軍のジャケットを思わせ、最早これだけで彼リフキンがアレンの分身であることを物語っている。
映画祭に群がる映画人のスノッブぶりを嘲笑しつつ、昔は良かったと数々の名作をパロディ風に繋ぐ。フェリーニ、ベルイマン、トリュフォー、ゴダール。
ルルーシュ「男と女」('66)に至っては音楽までそのまま。
大学で映画を教えているというリフキン、言うほどインテリジェンスは感じられず水野晴郎ばりの「映画って良いですね」のレベル。
ブニュエル「皆殺しの天使」('66)もそのままイタダキ、その部屋でインテリぶって親族をバカにする為に持ち出すのが稲垣浩「忠臣蔵」('62)に黒澤明「影武者」('80)。
イナガキとかナカダイとか言いにくい日本名をわざと繰り出す老醜。
そういえば「マンハッタン」でアレンが「乱」('85)を観終わって劇場から出て来るシーンがあった。
妻(ジーナ・ガーション、なんちゅうキャスティング)と妻が宣伝を担当するフランス映画の監督(ルイ・ガレル、フランソワ・オゾンがモデルか)の会話に全然入り込めずにヌーベルバーグの巨匠の話しを独言る老いの惨めさがイタい。
ラストはベルイマン「第七の封印」('63)そのまま。死神役は後から知ったがクリストフ・ヴァルツ。
その死神に「見放され」まだ生きて行くリフキン。
全体の完成度はともかく、自己模倣を許せよと自身の来し方行く末を一本作品に出来た映画作家としての幸福感に満ちている。
リフキン役のショーンもミスキャストだと思うが目くじら立てても仕様がない。