「シャドウ・プレイ」のメイキング・ドキュメンタリー。ロウ・イエ監督の妻が監督している。
我々がつくる日本映画より何十倍もバジェットが大きい「シャドウ・プレイ」だが現場のプロセスはさほど変わらない事がよく分かる。俳優エディソン・チャンが監督にくって掛かるシーンがあるが、ああいうことも無くはないし、制作部のミスで弁当が届かない事も「あるある」だ。
大きく違うのは俳優同士のディスカッション。はっきりと脚本の解釈の違いを討論している。
中国語が完璧な撮影監督のジェイク・ポロックはアメリカ出身で台灣映画界で活躍している。またロウ・イエ監督の要望で全速力での手持ちキャメラはアスリートレベル。コミュニケーション能力と体力に脱帽。音楽のヨハン・ヨハンソンはポスプロ中に亡くなったのか。
日本の映倫は検閲ではあるが、その基準は良し悪しは別としてはっきりしている。対して中国のそれは大きく違う。勿論比較にならないほど厳しい。
本編では検閲によるカット要請が具体的にどんな表現なのかは分からないままだが、記者会見で怒りを湛えた表情でその点について沈黙を守るロウ監督の心中察して余りある。検閲は観客のレベルを下げる、は至言。
「シャドウ・プレイ」冒頭の、若いカップルが触れてしまう死体がはっきり見えないのもその影響なのかも知れない。
とはいえ制作現場全てがパワフル、無用な検閲さえなければ韓国映画と勝負出来るのに、勿体ない。貧しい低予算でガラパゴスな日本映画は蚊帳の外。
見逃しているロウ監督の「二重生活」(2012)を観たくなった。