映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「暗いところで待ち合わせ」監督・天願大介 at シネリーブル神戸

幼くして母と生き別れ、事故によって途中失明、父親と二人で暮らすミチル(田中麗奈)。彼女の何度目かの誕生日、父は急逝、天涯孤独となってしまう。盲目での独り暮らしは砂を噛むような日常だが、ある事件をきっかけに、彼女の家に一人の男(チェン・ボーリン)が侵入する。彼は殺人犯の疑いをかけられ逃走中、ミチルが盲目なのを知って、家に忍び込んだのだ…というお話し。
まず、素朴な疑問として、如何に盲目とはいえ、至近距離で何度も接する男に気がつかないのは不自然。人間には気配というものがあり、映画には映らないが匂いというものがある。女性なら、男性の気配、匂いというものを感じる筈だし、盲目なら尚更敏感であると聞く。なのに、ミチルは映画中盤に至るまで彼の存在に気がつかない。遅過ぎる。例えばだが「彼の気配」を察知したミチルが自分を守ってくれる父親の霊だと勘違いし続けている、という展開ならどうだったか、と思う。「イタリア」というキーワードで「真犯人」がそこはかとなく匂う展開は面白いが、あれだけ男の気配を感じなかったミチルがどうして真犯人の振る舞いに異常を感じるほど勘が鋭いのか…?全体に主人公達の周りの人々があまりに薄情なのも気になった。
とまれ、田中麗奈は素晴らしい演技。父親の形見である大き過ぎるオーバーコートを着てとぼとぼと歩く哀愁は彼女ならでは。佐藤浩市の悪役ぶりも見物。