映画和日乗

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「アフターサン」監督シャーロット・ウェルズ at アップリンク京都

a24films.com

 After SunではなくAftersun。日焼け止めローションのことだそう。

A24作品、よく言えば変化球、悪く言えばあざとい「意欲作」を放つ。

16㎜フィルム撮影かと思って観ていたがIMDbによると35mmとのこと。

冒頭からひたすら横たわる人物を捉え続け、ながーいカットを繋いで行く。テンポは悪いがそれは確信犯。

英国からトルコのリゾート地にバスでやって来た父カラム(ポール・メスカル)と娘ソフィ(フランキー・コリオ)の過ごす時間を捉え続ける。

劇的な事は何も起こらない。キスするカップルが数組捉えられ、キスへの拘りを伺わせる。後半、ソフィが目撃する男同士のキス。

観ている間に娘は普段母親(画面には一切出てこない)と暮らしている事、別居の理由は恐らく父の精神的不安定であることがうっすらと浮かび上がって来る。

この辺り、説明はなく、ウェルズ監督はビデオカメラを通して娘から見た父の姿でそのナイーヴさを感じさせるという見せ方をする。撮られるのを嫌がる父。

 娘がカラオケを歌おうと父を誘う。頑なに拒否する父。ド下手な娘に「歌のレッスン受けてもいいよ」と父。「お金ないのに」と娘。

父カラムはニコニコしているかと思うと塞ぎ込む。平気で拾ったタバコを喫う。

 時空間がところどころ入れ替わり、大人になっているソフィの視点が挿入され、これまでのショットの断片が示していた意味が徐々に繋がって行く。

そこへクィーン&デヴィッド・ボウイのUnder Pressure


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 そうか。そういうことか。この歌の力は凄い、込み上げてくるものがある。

カラムは娘に自分の弱さを見せまいとしていた。が、数十年経ってビデオを見ていたら、あの時の父の弱さに気が付く娘。

白い部屋にカラム。時空間が歪み、記憶の世界へと繋がるドアが開く。

鮮やか。