邦題は身も蓋もないが原題は"EN CORPS"、体の中で、という意味だそうで、本作の中盤から展開するコンテンポラリーダンスの真理のような意味だろう。
セドリック・クラビッシュ監督は個人的にご贔屓で、この人は青春映画が良い。今回もそのカテゴリーと言って良いだろう。
パリの劇場、丁寧にバレエの舞台の始まりから見せて行く。舞台裏、ヒロインのエリーゼ(マリオン・バルボー)は相手役の男性ダンサーが別のダンサーといちゃついているのを目撃してしまい、その動揺からかフィニッシュを決めなければならない場面で足を挫いてしまう。
この舞台を見せるキャメラが素晴らしい。そしてこの後、バレエもコンテンポラリーダンスも躍動感と音響、光線のアンサンブルで見せ切る。クラビッシュ監督が主題としてダンスによる感情表現に絞っている事が窺える。
エリーゼを巡る恋はありきたりとは言わないまでもフランス映画では典型的なものだ。テンポも緩いが、それが何とも心地良い。
エリーゼはバレエを休んでコンテンポラリーダンスの合宿へ。
そこでの料理とダンスと恋の日々。ストーリーにさほど起伏がないのに楽しく見ていられるのは舞台芸術の素養が監督にも演者にもあるので、ダンスの動きと音響がストーリーにメリハリを効かせいてるのだ。
クライマックスの、エリーゼの父の涙はベタながら素直に同調できたし、一人の女性の成長譚として清々しく、幸福な気分にさせてくれる。
佳作、お勧め。ところで「名古屋風チキン」てのが出てくるけど、パリで流行っているのか?