映画『ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命』公式サイト
英国BBC製作。
私はこの映画のラストに出て来るテレビ番組をかなり前にYouTubeで見ていて、映画化したら良いだろうな、とずっと思っていた。今でも見られる。
監督のジェームズ・ホーズはテレビ畑出身、劇映画は初監督。
手堅く、オーソドックスな演出。脚本も安心安定という意味でオーディナリー。
絶滅収容所も激しい暴力も画としては一切出て来ない。
アンソニー・ホプキンスも恐らくは実在のニッキー・ウィントンに近づけているのだろう、クセがない。言わずもがなだが世界最高峰の演技者、何でもやれる。
そのニッキーの若き日の母親役がヘレナ・ボナム・カーター、この人が秀逸。ビシビシ啖呵台詞がキマる。「英国の良いところは、人権、他人を敬う。あなたはどう?」と官僚主義の英国人役人に迫る。ジョナサン・プライスがちょこっと出てきてこれまたええ味。
こういう一流の英国俳優を見ていると、未だ大仰に泣き叫ぶ事が持て囃される此岸の国の演技に堪らない恥ずかしさを感じる。
お話は既に見知った杉原千畝の偉業と変わらない。ニッキー・ウィントンはオスカー・シンドラーほど複雑な人物でもない。が、具体的にあの暗黒の時代の勇気ある善き人の行動を見せられると、今現在も世界中の紛争地域で同じような人が活動しているのだと訴えかけているように見えて来て、「関心領域」内の私達を撃つ。
気を衒わず、地味なつくりだが好もしい。佳作、お勧め。