映画和日乗

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「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」監督・井上淳一 at シネリーブル神戸

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 サブタイトルが「止められるか、俺たちを」の2となっている。近年、続編のタイトルに番号を付けるのは忌避される傾向にある。1を観ていない人が食い付いてこないからだ。昔は1がヒットして2、3、と続くのが恒例だったが、今の客は己の無知を恥と思わず作者の説明が不足していると高みに立つからそういう現象となっている。

そんな「2」も「3」も沢山あった1980年代の名古屋が舞台。

井上監督は歳が私より一つ下なので観ている映画はほぼ同時代。通過している映画史も並走していたことになる。

 井浦新の憑依芸とも言える若松孝二監督の行動が可笑しくて、そして切なくて堪らない。「大林なんてどこが良いんだ」に爆笑。

19歳の井上青年(杉田雷麟)のダメ助監督ぶりも「あるある」だ、本人は辛かっただろうが観ているととても可笑しい。

シネマスコーレの人々、若松監督の話す言葉に登場する人名も記号も一切説明がない潔さ。レンセキが、あっちゃんが、と知らない人は置いて行く。それでイイのだ。

美加理、太田達也の自主映画に出ていた人。不意に出て来て(本編では美加理をモデルにした人が演じている)懐かしさに胸踊る。今はどうしているのだろう。

 ラスト、あの世の砂漠はパレスチナか。

 自分の青春時代の記憶を映画に出来る幸運で幸福な映画監督は世界中で数えるほどだろう。

例えそれが負の記憶だとしても。

スピルバーグなんか75歳でそれをやっているのだから。彼は間に合ううちにと思ってつくったに違いない。それを50歳代で実現させた井上監督が羨ましい。

しみじみ1980年代を感じる。久しぶりに映画を観て笑った。観られた私も幸福だ。