映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

「敵こそ、我が友〜戦犯クラウス・バルビーの3つの人生〜」監督ケヴィン・マクドナルド at テアトル梅田。

「リヨンの虐殺者」と渾名されたナチの高官クラウス・バルビーの生涯を追うドキュメンタリー。バルビーに関しては、1987年の逮捕時の事を覚えているし、同じテーマのテレビ・ドキュメンタリーを見ていて、個人的には知識があった。
映画前半、夥しい数のフランス・レジスタンス闘士の死体が映し出される。更に強制移送され、殺されたという40数人の子供たちの悲しい笑顔のスチールが重ねられるにつれ、誤った国家主義、極端な民族主義、排他的宗教、そして戦争によって「人は実に簡単に殺されて行く」ことを示しつつ、それらのイデオロギーと宗教(ここではバチカンだ)は、虐殺者ですら「生かす」ことが可能であることを映画中盤から延々見せつけて行く。しかし、後半のフランスでの法廷シーンが迫力があるだけに構成的には勿体ない気がする。もう少しあの法廷で詳らかにされたであろう彼と、彼の背後の犯罪を見たかった。ベトナム系弁護士のキャラクターも強烈だ。とまれ、アメリカの国家主義もナチとの合わせ鏡であると暴くこの監督の意気が伝わって来る。