この手のシリーズものは一作ごとに監督が代わるのがハリウッドの常だが一貫してヴォーン監督が務めている。
そのヴォーン監督、これまでの二作は過剰なまでのアメリカ映画愛が塗り込められていたが本作はよもやの20世紀欧米の戦争の歴史を描く。ボーア戦争、サラエボ事件、第一次世界大戦からロシア革命。それらの主導者や重要人物が一同に悪の秘密結社に会しているという奇想天外。ロシア皇帝を籠絡したラスプーチンとレーニンとマタハリがそのメンバーという「よくそんなこと考えたな」な脚本。
そこにキングスマンの前身、オックスフォード(レイフ・ファインズ)とその息子(ハリス・ディキンソン)が史実の紛争回避の為に奔走する。息子は父の意に反して第一次世界大戦に志願出兵することで悲劇が起きる。全ては戦争のせい、戦争を回避する為の情報機関としてキングスマンが結成されるという存在理由。
昨今のSNSに跋扈する歴史修正主義、エビデンスを捏造した陰謀論への痛烈な皮肉にもも取れる。
20世紀初頭からの欧米の歴史のおさらい、それが分かっていないと物語から置いていかれるし、楽しめないという知性と教養が試されるのでこれからご覧になる方はその覚悟で。
教養、という点ではチャイコフスキーの「1812」。
この曲に合わせての斬り合いは本編の白眉。
なるほど。こういう曲の成り立ちなのか。
jbpress.ismedia.jp この「恨み」が世界戦争に結びつくなんて。世界史のテストみたいな映画。
エンドロールが始まっても席を立つなかれ、ダメ押しの陰謀論が現れる。教養がないとこの陰謀を見て「そうだったのか!」と信じちゃうかも。そんな奴おれへんやろ。