映画和日乗

映画、食、人。西に東に。

                         

映画

「ケイコ 目を澄ませて」監督・三宅唱 at シネリーブル神戸

映画『ケイコ 目を澄ませて』公式サイト ショーン・ペンの新作に続いて、こちらも16㎜での撮影による映画。 ペンが記憶装置としてのフィルムのざらつきを選んだのに対して、本作は画角もスタンダード、確信的に映画そのものの原点回帰を目指している。まして…

「フラッグ・デイ 父を想う日」監督ショーン・ペン at シネリーブル神戸

https://www.imdb.com/title/tt2304637/?ref_=ext_shr_lnk ショーン・ペン監督作品は肌に合うというか、アメリカン・ニューシネマのテイストと時に情緒過多な感傷が心地良い。が、前作「ラスト・フェイス」(2016)は未見。 今作「フラッグ・デイ」は初めての…

「涙をありがとう」監督・森永健次郎 at 神戸映画資料館

トップページ - 神戸映画資料館 www.nikkatsu.com 新長田映画講座「神戸の映画 懐かしの風景vol.1」の一環。 1965年日活。ニュープリントで画質は良好。 先般観た同じく神戸ロケの日活映画「青春の風」が1968年。 mitts.hatenadiary.jp 「涙をありがとう」は…

「ある男」監督・石川慶 at 大阪ステーションシネマ

映画『ある男』公式サイト | 11月18日(金)全国ロードショー 平野啓一郎の原作は未読。 絵画に向き合う男の後ろ姿から始まり、田舎の文具店で店番をする女性(安藤サクラ)の涙から物語は始まる。そこへやって来る男(窪田正孝)が絵の具を買い求め、二人は出会う…

「土を喰らう十二ヵ月」監督・中江裕司 at キノシネマ神戸国際

tsuchiwokurau12.jp 映画化作品も多い水上勉のエッセイが原案とのこと。あらためて水上勉を検索してみると 水上勉 - Wikipedia 夥しい数の著作が並ぶ。このwikiが正しければ、心筋梗塞で死生を彷徨った時期と、長野県の山村に移り住んだ時期が本作とは違って…

「ザ・メニュー」監督マーク・マイロッド at OSシネマズミント神戸

www.youtube.com どこかの船着場へと向かう数組の大人たち。その会話から極上の料理にありつけるツアーだと分かる。船着場には今ではあまり見かけないであろうひと昔もふた昔も前のメイクと出立ちの中国人女性が招待状をチェックしている。 絵に描いたような…

「LOVE LIFE」監督・深田晃司 at シネ・ヌーヴォX

映画「LOVE LIFE」公式サイト 日本のどこにでもありそうな団地の風景。 棟を囲むように位置する運動場なのか憩いのスペースなのか、空き地で文字の書いたカードを持って「おめでとう」という言葉を掲げる練習をしている人々。団地の中、その光景が見下ろせる…

「青春の風」監督・西村昭五郎 at 宝塚シネ・ピピア

www.nikkatsu.com 宝塚映画祭最終日のプログラム、1968年日活作品。 ニュープリントで画質は頗る綺麗。吉永小百合のニキビまでくっきり。 小百合、和泉雅子、山本陽子(全員東京出身だ、関西弁は合格の域)の神戸の短大同級生の卒業後の人生。 和泉雅子の兄で…

「女優時代」監督・大森一樹 at 宝塚シネ・ピピア

www.takarazukaeigasai.com これから#女優時代 みる#大森一樹 pic.twitter.com/YSMWsPrxtS— 白羽弥仁 (@makemydmitts11) 2022年11月20日 図らずも大森一樹監督追悼上映となってしまった宝塚映画祭のプログラムの一本。 1988年読賣テレビ制作のテレフューチャ…

「ミューズは溺れない」監督・淺雄望 at シネ・ヌーヴォX

映画『ミューズは溺れない』 (@musehaoborenai) / Twitter 海に面した町、高校の美術の授業から始まる。 校外写生、スケッチをしている高校生の人間関係の始まりが視線とその距離だけで表現される緊張感。一人の生徒が不意に海に突き飛ばされる事で物語が動…

「やまぶき」監督・山﨑樹一郎 at 元町映画館

映画『やまぶき』山﨑樹一郎監督最新作 エドワード・ヤンの「恐怖分子」(’86)だ、と本編が始まってからずっとあの映画を想起してみていた。一見関係のない人間関係がある偶然によって繋がって行く。 正社員に、と吉報を貰った砕石工場職員チャンス(カン・ユ…

「犯罪都市 THE ROUNDUP」監督イ・サンヨン at OSシネマズミント神戸

ランキング参加中洋画 www.imdb.com 「犯罪都市」(2017)を観てこれは続編出来るなと予想したら案の定完成。 「犯罪都市」監督カン・ユンソン at シネマート心斎橋 - 映画和日乗 凶悪極悪犯罪者を叩きのめす我らがドンソク兄さんという構図は変わらない。 腕…

「夜明けまでバス停で」監督・高橋伴明 at kino cinema 神戸国際

映画「夜明けまでバス停で」監督:高橋伴明×主演:板谷由夏 観ている途中から板谷由夏の横顔が桃井かおりそっくりに見えて仕方がなかった。 そういえば若松孝二監督の映画で桃井かおりでホームレスが絡む話‥‥「われに撃つ用意あり」('90)か。 あの頃映画 松竹D…

「川っぺりムコリッタ」監督・荻上直子 at 角川シネマ有楽町

映画『川っぺりムコリッタ』|2022年9月16日(金)全国ロードショー 川っぺりの土手に堆く積まれた廃棄された電話の数々が現れて、そうか、あれかと。 そういえばムロツヨシ演じる野菜を作っている男の発達障害をうかがわせる行動、そして真夏に黒いスーツを…

「海でなくてどこに」監督・大澤未来 at 神戸映画資料館

神戸映像アーカイブ実行委員会 神戸発掘映画祭2022のプログラムの一本。 初上映ということでワールド・プレミア。 映像作品「海でなくてどこに」 – Marylka Project 杉原ビザによってリトアニアからシベリア経由で日本の福井県敦賀市に到着したユダヤ人難民…

「秘密の森の、その向こう」監督セリーヌ・シアマ at シネリーブル神戸

www.imdb.com 素晴らしい傑作「燃ゆる女の肖像」(2019)の監督セリーヌ・シアマ最新作。 原題はPetite Maman、英語ではLittle Mama。 冒頭、年老いた女性のアップ、クロスワードパズルに興じていると思いきや、パズルを解いているのは老女の手元にいる少女の…

「ヘルドッグス」監督・原田眞人 at 109シネマズHAT神戸

www.helldogs.jp 畏兄原田眞人監督最新作。 既にこの次の作品が仕上がっていて、その撮影現場には顔を出させて貰った。本作を観て思うのは、私より15歳年上の原田さん、何でこんなに元気なんだろ、ということだ。 原作は深町秋生の同名小説。 ヘルドッグス …

「彼女のいない部屋」監督マチュー・アマルリック at シネリーブル神戸

www.imdb.com 俳優としてのアマルリックは知性と茶目っ気が同居しているような魅力があり、ずっとご贔屓なのだが、本作は監督としての長編6作目。原作は戯曲だそうで、脚本はアマルリックが兼任している。 原題は英訳で"Hold Me Tight"、私を抱きしめて、だ…

「ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言」監督ルーク・ホランド at シネリーブル神戸

www.focusfeatures.com 監督のルーク・ホランドは本作の完成後2020年に死去。IMDbのデータベースによると一貫してナチスの過去を追う作品がフィルモグラフィに並ぶ。 9時間余の気の遠くなる程の労作「ショアー」(1997)の中に、強制収容所の看守が、大量殺戮…

「モガディシュ 脱出までの14日間」監督リュ・スンワン at 角川シネマ有楽町

mogadishu-movie.com www.imdb.com ソマリア内戦というと直ぐに思い出すのがリドリー・スコットの「ブラックホーク・ダウン」(2001)だ。 ブラックホーク・ダウン (字幕版) ジョシュ・ハートネット Amazon モガディシュの戦闘 - Wikipedia キネマ旬報7月下旬…

「三姉妹」監督イ・スンウォン at シネマート心斎橋

www.zaziefilms.com 三姉妹、それぞれの家族に向かうはずの愛のベクトルが違う方向に向けられている。 長女ヒスク(キム・ソニョン)は常に卑屈で娘の言いなり、次女ミヨン(ムン・ソリ、凄まじい好演)はキリスト教から派生した韓国独自の宗派に傾倒、三女ミオ…

「ベイビー・ブローカー」監督・是枝裕和 at 109シネマズHAT神戸

gaga.ne.jp Broker (2022) - IMDb 英語タイトルは「Broker」。 是枝作品は所々未見のものがあり、前作「真実」(2019)も見逃している。 それでもこの監督が「家族ならざる家族」というか、かつて小津や山田洋次が描いて来た血縁のみによる家族像から離れて行…

「リコリス・ピザ」監督ポール・トーマス・アンダーソン at シネリーブル神戸

www.imdb.com P.T.アンダーソンの傑作「ブギーナイツ」('97)は大好きでいまだにDVDで見直す。本作は「ブギーナイツ」の時代設定、1970年代末より少し前、1973年の物語。 15歳と25歳の恋、ストーリーはどうと言うことはなく、細部と時代の再現度を楽しむつく…

「PLAN75」監督・早川千絵 at 大阪ステーションシネマ

happinet-phantom.com ピントが合っていない画から始まる。即座にその不穏な影の動きから無差別殺人が起きたことが読み取れ、老人が殺されたことが顕在する。 ラジオやテレビの音声を際立たせたり、恐らく偶然画角に入ったのであろう灯油販売のセールステー…

「マイスモールランド」監督・川和田恵真 at 新宿ピカデリー

mysmallland.jp 埼玉県川口市が舞台。 コインランドリー店の2階に住むクルド人家族。ストーリーはサーリャ(嵐莉菜)の高校生活を中心に進んで行く。成績優秀、友達もいるサーリャだが空気を読んで場に合わせている事が見えて来る。 日本語とトルコ語が話せる…

「義足のボクサー」監督ブリランテ・メンドーサ at 大阪ステーションシネマ

gisokuboxer.ayapro.ne.jp 3年前「みとりし」のプロモーションで渋谷のコミュニティラジオに出演した時、仁科貴氏に紹介して貰ったのが本作主演の尚玄氏だった。 「渋谷のラジオ」出演 - 映画和日乗 この時、これからフィリピンで映画を撮る、という話しを彼…

「トップガン マーヴェリック」監督ジョセフ・コシンスキー at TOHOシネマズ新宿

www.imdb.com 2019年7月の記事 www.cnn.co.jp そして2022年6月の記事 www.cinematoday.jp トランプ政権下で制作されバイデン政権下で公開されたこの映画。 トップガンチームの一員にアジア系が一人いるのが確認できるがストーリーには全く絡まず、中盤以降は…

「ちょっと思い出しただけ」監督・松井大悟 at 出町座

映画『ちょっと思い出しただけ』オフィシャルサイト 2022年2/11公開 ジャームッシュの「ナイト・オン・ザ・プラネット」('91)が下敷きになっているようで、本編にも池松壮亮演じる元ダンサー(それは物語を追って行くうちに分かる)で照明技師が自室でこれを観…

「20歳のソウル」監督・秋山純 at OSシネマズハーバーランド神戸

映画『20歳のソウル』 | 大ヒット公開中! 普段は観ないジャンルの映画だが、急遽キャストのチェックの必要があって公開初日に駆け付ける。 実話がベースとのこと、船橋の高校の校舎からのオープニングはテンポよく人物紹介、青空がより蒼く強調され、映画的…

「アネット」監督レオス・カラックス at 塚口サンサン劇場

www.annettethefilm.com さほど熱心にカラックスの作品を追って観てはいないが、強烈な作家主体の映画がほとんど生まれない現在、この新作は観なければと思っていた。 観終わってから「映画芸術」2022年春号の特集を読むと制作の過程がよく分かった。堀越謙…